Web事業のPMI準備では、成約直後に止められない業務を先に特定します。顧客対応、保守・障害対応、請求、開発、広告配信、注文・決済を継続する担当者と権限を揃え、そのうえで組織やツールを統合します。基本合意やDDの段階から、契約条件と引き継ぎの作業を対応づけることが大切です。
編集責任:Web M&A総合センター編集部(運営:株式会社M&A Do)。以下の時期・計画は実務上の例で、法定期限や一律の完了期限ではありません。
成約前に責任者・未解決事項・完了条件を決める
譲渡側と譲受側に責任者を置き、顧客、人事、契約、技術、請求の担当を決めます。DDで判明した問題を、最終契約での対応、成約までの解消、成約後の継続対応に分け、期限と証跡を台帳に記録します。
契約・雇用・権限がどのように承継されるかは、手法と個別条件で異なります。株式譲渡でも顧客契約やライセンスの経営変更条項を確認し、事業譲渡では対象と必要な同意・手続を確認します。代表者しかできない業務、口頭契約、名義不明のアカウントを残したまま、移管完了として扱わないようにします。
顧客へは、サービス継続の具体的な内容を説明する
売上上位顧客、更新が近い契約、代表者への依存が強い顧客を把握し、説明の担当者と時期を決めます。経営変更の理由に加え、料金、業務範囲、担当者、保守窓口、請求先、進行中の案件がどうなるかを伝えます。必要な同意と、通常の説明を区別して管理します。
顧客ごとの禁止事項、入稿や変更の承認、報告頻度、緊急連絡も引き継ぎます。説明後の問い合わせ、担当変更の連絡漏れ、請求の不一致を記録し、顧客離脱や対応品質の変化を追います。
重要人材と代表者の役割を具体化する
正社員、業務委託、外注先、パートナーの役割と担当案件をまとめます。採用、評価、報酬、働き方、拠点、開発方針が変わる場合は、決まった内容と未決事項を区別して説明し、個別面談で不安と業務負荷を把握します。
代表者が残る場合は、期間、業務、権限、報酬、後任、引き継ぎの終了条件を明確にします。すぐ退任する意向がある場合は、営業・顧客対応・品質確認・障害対応などを分け、誰が代替できるかを成約前に確認します。キーパーソンの残留を前提にするだけでなく、判断手順を複数人へ渡します。
アカウントとデータ移管は切替後の確認まで計画する
ドメイン、サーバー、CMS、広告、解析、リポジトリ、決済、メール、SNSを台帳化します。所有者、管理者、契約、ライセンス、更新期限、二要素認証、連携先を確認し、移管に必要な承認と切替日を決めます。
移管台帳には、担当者、期限、完了条件、根拠資料、未解決事項を記録します。パスワードの受け渡しだけで終わらせず、買い手のアクセス、旧権限の整理、バックアップ、復旧、ログ、請求・広告・決済の動作を確認します。顧客データの提供や利用範囲も契約・法令に沿って管理します。
Day1・30日・100日の引き継ぎ計画(例)
次の表はWeb・IT事業の計画例です。契約、顧客・従業員への説明時期、サービスやプラットフォームの移管手続に応じて調整してください。完了した作業と、期限だけが過ぎた作業を分けて管理します。
| 時点 | 担当・期限 | 顧客説明 | 人材対応 | 権限・運用の確認 |
|---|---|---|---|---|
| Day1 | 双方の責任者が成約日までに連絡先・役割・初動を合意 | 合意した時期に主要顧客へ方針、窓口、継続を説明 | 経営方針と相談先を示し、重要人材の役割を確認 | 保守・障害・請求の責任者と本番アクセス、緊急連絡を確認 |
| 30日まで | 顧客・人事・システム担当が台帳を更新し進捗を報告 | 連絡漏れ、問い合わせ、契約・請求の不一致を解消 | 面談で不安・負荷・退職懸念を把握し、対応担当と期限を決定 | 名義・権限・ライセンス・更新期限を棚卸し、テストと未完了項目を記録 |
| 100日まで | 双方の責任者が未解決事項と統合効果をレビューし次の計画を決定 | 顧客維持、対応品質、説明後の課題を確認し追加提案を調整 | 定着、役割分担、負荷を点検し属人業務を複数化 | 完了証跡、例外対応、障害手順を確認し残る課題の担当・期限を更新 |
計画の考え方と実践ツール:中小企業庁「PMIを実施する」、中小PMIガイドライン。
業種ごとの継続業務を点検し、統合の順番を決める
- Web制作・受託開発:進行中案件の納期・検収・保守、CMS・コード、外注先への発注を継続する。
- 広告・SEO支援:配信予算、レポート、改善提案、顧客の管理権限を維持する。
- SaaS・アプリ:課金、ストア・クラウド、監視、障害対応、セキュリティ更新を止めない。
- EC・メディア:注文・決済・配送・返品、広告契約、編集・更新、権利を確認する。
- 地域企業・コンサル:地元顧客や紹介元、提案人材、拠点・ブランドを継続する条件を確認する。
共同営業、会計、ツール、評価制度の統合は、顧客や人材への影響と必要な作業を確認して順番を決めます。定例会では顧客維持、採算、サービス品質、未解決リスクを見て、計画を更新します。詳しい資料の形式はDD資料ガイドを参照してください。価格や正常収益力の説明は評価・交渉ガイドにまとめています。
よくある質問
Q. PMIは成約してから考えればよいですか。
A. DDや条件交渉の段階から、継続業務、責任者、同意・移管、未解決事項を準備します。契約条件と実行する作業を対応づける必要があります。
Q. すぐにシステムや評価制度を統一すべきですか。
A. まずサービス継続と顧客・人材への説明を優先します。変更の目的、負担、承認、テスト、問題発生時の対応を揃えてから統合の順序を決めます。
Q. 100日ですべて終える必要がありますか。
A. 表の期間は計画例です。契約や移管手続、顧客・人材の状況に応じて調整し、未解決事項の担当と次の期限を残します。
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