Web M&A総合センターは、Web制作会社、SaaS・クラウドサービス、EC・D2C、Webメディア・SEO、広告運用、アプリ、受託開発・SES、AI・データ関連事業など、Web・IT領域の会社・事業の譲渡、事業承継、資本提携を支援する相談窓口です。運営は株式会社M&A Doが行っています。
Web事業の価値は、決算書の売上や利益だけでは説明しきれません。月次継続収益、顧客の継続率、検索流入、広告効率、会員基盤、ソースコード、ドメイン、クラウド環境、データ、制作実績、外部パートナー、運用手順など、複数の要素が組み合わさって事業が動いているからです。一方で、創業者個人のアカウント、口頭の外注関係、整理されていない権利、特定担当者の経験だけに運営が依存していると、数字が良くても承継の難易度は高くなります。
私たちが大切にするのは、単に買い手候補を紹介することではありません。なぜ譲渡を考えるのか、何を残したいのか、どの資産と契約を引き継ぐのか、どの情報をいつ誰に開示するのか、譲渡後も顧客・従業員・取引先に価値を届け続けられるのかを、一つずつ整理することです。まだ売却を決めていない段階でも、匿名性を保ちながら選択肢を確認できます。

このページでは、Web M&A総合センターの役割、対象事業、情報管理、価値整理、手続の流れ、デューデリジェンス、クロージング、PMIまでを実務に沿って紹介します。
Web M&A総合センターが提供する3つの価値
1.売却を決める前から、選択肢を比較できる
「数年後の承継に備えたい」「別事業へ経営資源を集中したい」「開発投資を続けられる相手と組みたい」「代表者が抜けても事業が続く形を考えたい」。相談の出発点は、必ずしも今すぐの売却である必要はありません。
株式譲渡、事業譲渡、資本業務提携、段階的な承継、経営の継続、事業の縮小・終了などを比較し、目的、希望時期、譲れない条件、顧客や従業員への影響を整理します。検討の結果、現時点ではM&Aを実行しないという判断になることもあります。早く相談する価値は、早く売ることではなく、準備する時間を確保できることにあります。
2.Web事業特有の資産とリスクを、買い手に伝わる形へ翻訳する
Web事業では、財務数値と運営実態の間に距離があることがあります。たとえばSaaSの売上が増えていても、解約率、値引き、オンボーディング負荷、インフラ原価、特定エンジニアへの依存によって将来性の見え方は変わります。Webメディアの利益が高くても、特定検索語や一つの広告ネットワークへの依存、更新体制、記事や画像の権利関係を確認しなければ、再現性を判断できません。
そこで、事業モデルごとのKPIと、契約・技術・権利・人・データの状態を分けて整理します。「強み」を抽象的な言葉で終わらせず、何が継続収益を生み、誰がどの手順で運営し、どの条件なら買い手が引き継げるかを明確にします。同時に、弱点や未整備事項も早めに把握し、改善するもの、契約条件で扱うもの、買い手へ説明するものに分けます。
3.秘密を守りながら、必要な相手へ段階的に情報を届ける
M&Aの検討が不用意に広がると、従業員、顧客、取引先、採用候補者に不安を与えかねません。Web M&A総合センターでは、初期相談、匿名情報の作成、候補先の確認、秘密保持契約、詳細情報の開示、面談、意向表明、デューデリジェンスというように、目的と相手を確認しながら情報を段階的に開示します。
初期段階で会社名、サービス名、ドメイン、主要顧客名まで一度に伝える必要はありません。業種、収益モデル、概算規模、特徴、希望条件を抽象化した匿名情報から検討を始め、候補先の信用、買収目的、競合関係、資金計画、運営体制などを確認したうえで、次の開示へ進みます。秘密保持契約を結んだ後も、すべての資料を無制限に共有するのではなく、閲覧者、範囲、時期、保存方法を管理します。
なぜWeb・IT領域に特化するのか
Web事業の承継では、「何を譲るか」と「本当に移せるか」を同時に確認する必要があります。主な対象は次のように広がります。
- 会社の株式、対象事業の資産・負債、売掛金、在庫
- 顧客契約、保守契約、SLA、販売代理店契約、業務委託契約
- ドメイン名、DNS、サーバー、クラウド、CDN、メール、証明書
- ソースコード、リポジトリ、CI/CD、開発環境、仕様書、課題管理
- 商標、ロゴ、UI、記事、写真、動画、デザイン、マニュアル
- 会員情報、購買履歴、問い合わせ履歴、分析データ、学習データ
- 広告、解析、決済、ECモール、アプリストア、SNSの各アカウント
- 従業員、役員、外部開発者、ライター、デザイナー、運用パートナー
- 運用カレンダー、障害対応、顧客サポート、請求、更新、バックアップ
これらはすべて同じ方法で移るわけではありません。株式譲渡で契約主体が変わらない場合と、事業譲渡で個別資産・契約を移す場合では、必要な同意や手続が異なります。クラウドやプラットフォームには独自の規約、権限、本人確認、審査、請求設定があります。契約書に「一式を譲渡する」と書くだけで、すべての利用権やアカウントが自動的に移るとは限りません。
だからこそ、候補先との交渉に入る前から資産台帳と契約台帳を作り、移管方法、必要な承諾、代替策、実施日、責任者を確認することが重要です。Web・ITへの理解は、価格説明のためだけでなく、クロージング後もサービスを止めないために必要です。
対象となるWeb・IT事業
Web制作会社・デジタルエージェンシー
Web制作会社では、受注残、継続保守、顧客構成、提案力、制作工程、デザイナー・エンジニア体制、外注ネットワーク、CMSや業種別の知見が価値の中心になります。売上が代表者の営業力に依存していないか、見積から検収まで標準化されているか、顧客サイトの管理権限を適切に預かっているか、制作物の著作権や利用許諾が契約で整理されているかを確認します。
成果物の権利は「制作費を支払ったから当然にすべて発注者へ移る」とは限りません。従業員制作、外注制作、素材サイト、フォント、写真、動画、プラグイン等で条件が異なるため、契約書、発注書、規約、ライセンスの確認が必要です。文化庁の著作権の登録手続きや著作権契約書作成支援システムは基本事項を確認する入口になりますが、実際の譲渡範囲は個別契約に即して専門家と確認します。
SaaS・クラウドサービス
SaaSでは、MRR・ARR、契約社数、1契約当たりの平均売上、解約率、NRR、無料から有料への転換、CAC、回収期間、粗利、サポート負荷、アップセル余地などを時系列で確認します。単月の売上ではなく、顧客コホート、契約期間、値引き、解約理由、未収、返金、障害履歴を組み合わせて継続性を見ます。
技術面では、アーキテクチャ、利用クラウド、データベース、権限、監視、バックアップ、リリース手順、技術負債、脆弱性対応、OSSライセンス、API連携、開発ロードマップを棚卸しします。SLAやデータ処理条項、再委託、越境データ、顧客への通知・同意の要否も案件ごとに確認します。利用クラウドを別組織へ移す場合、リソースが維持されてもIAMや組織ポリシーが変わることがあります。たとえばGoogle Cloudはプロジェクトの組織間移行について、移行前後で変わるものを公式に案内しています。
EC・D2C
EC・D2Cでは、売上だけでなく、商品別粗利、在庫回転、返品・返金、LTV、リピート率、広告依存度、自然流入、モール依存度、仕入先、製造委託、物流、決済、定期購入、カスタマーサポートを確認します。2024年の国内BtoC-EC市場は26.1兆円と経済産業省が公表していますが、電子商取引に関する市場調査の市場全体の成長が、個別事業の価値を保証するものではありません。商品の差別化、顧客獲得の再現性、表示・返品対応、在庫リスクなどを個別に見極めます。
通信販売では、事業者情報、価格・送料、返品特約、申込画面、定期購入条件等の表示が継続運営の前提になります。消費者庁の通信販売広告についてなどを参照し、買い手が運営主体となった後に必要な表示変更、決済・モール審査、問い合わせ窓口の切替えを確認します。
Webメディア・SEO・コンテンツ事業
Webメディアでは、セッションやPVだけでなく、検索・SNS・直接流入の構成、ページ群ごとの収益、検索語の集中、更新頻度、被リンク、広告・アフィリエイト契約、編集体制、記事品質、季節性、アルゴリズム変動への耐性を確認します。過去12か月だけでなく複数年を比較し、成長の理由と減少の理由を説明できるようにします。
記事、監修、写真、図解、動画、取材素材の権利と、執筆者・監修者との契約も重要です。転載・二次利用、氏名表示、改変、譲渡後の継続利用がどの範囲で認められるかを確認します。アクセス解析やSearch Consoleの権限も資産の一部です。GoogleはSearch Consoleの所有者・ユーザー管理で、旧所有者の検証トークンが残る場合の注意も案内しています。
広告運用・マーケティング支援
広告運用会社では、運用額だけでなく、手数料体系、契約期間、解約条件、顧客集中、媒体別の実績、提案・レポート体制、クリエイティブ制作、タグ管理、請求差額、媒体ポリシー違反の履歴を整理します。顧客名を早い段階で開示すると競合リスクが生じるため、業種、契約規模、継続期間などを匿名化して段階的に共有します。
Google Ads、Google Analytics、Merchant Centerなどは、共通パスワードを渡すのではなく、正規のユーザー追加と権限移行を使います。Googleの所有権移管に関する公式案内を参照し、請求プロファイル、管理アカウントとのリンク、コンバージョン、オーディエンス、同意管理を個別に確認します。GA4プロパティのアカウント間移動には権限・連携上の条件があるため、GA4プロパティの移動も確認します。
アプリ・ゲーム・デジタルプロダクト
アプリでは、ダウンロード数よりも、アクティブ率、継続率、課金率、利用者1人当たりの売上、サブスクリプション、ストア評価、獲得単価、サーバー費、運営更新、審査・ポリシー履歴を確認します。コードだけでなく、Bundle ID、署名、証明書、プッシュ通知、課金、分析、クラッシュレポート、サポートURL、プライバシー表示までが運営に関わります。
Appleは、アプリ売却等を想定したAppの譲渡の概要を公開し、移る情報と追加対応が必要な機能を案内しています。Google Playも別のデベロッパーアカウントへのアプリ移管の要件を定めています。申請時点の最新条件を確認し、ストア上の移管と、コード・バックエンド・契約・個人データ・決済の承継を分けて計画します。
受託開発・SES・IT人材サービス
受託開発・SESでは、案件別採算、稼働率、契約期間、商流、検収条件、瑕疵・責任、再委託、要員スキル、採用・離職、待機、個人への依存を整理します。請負、準委任、派遣などの契約形態を混同せず、顧客契約と実際の指揮命令・業務運用が整合しているか確認します。
フリーランスや小規模法人への委託が多い場合は、発注条件、支払期日、成果物の権利、秘密保持、再委託を棚卸しします。公正取引委員会のフリーランス法に関する公式情報や、IPAの情報システム・モデル取引・契約書(アジャイル開発版)は、取引の確認項目を考える際の参考になります。ただし、個別契約への適用や労働者性などは専門家の判断を仰ぎます。
AI・データ関連事業
AI・データ事業では、モデルやコードだけでなく、学習・評価データの由来、利用許諾、個人情報、出力物の取り扱い、外部モデルAPIの規約、プロンプト・評価方法、再現可能性、精度指標、安全性、監視、人による確認、顧客への説明を整理します。データセットの取得経路やライセンスが説明できなければ、買い手は継続利用の可否を判断できません。
経済産業省・総務省によるAI事業者ガイドラインの公式入口と、文化庁のAIと著作権についてを参照し、開発者、提供者、利用者としての役割を確認します。生成AIや機械学習に関する適法性・権利帰属は一律に断定できないため、対象データ、利用目的、契約、出力、地域ごとに専門家と検討します。
企業価値を考えるときに確認すること
財務数値を「続く収益」と「一時的な収益」に分ける
まず、月次の売上、粗利、営業利益、キャッシュフローを、商品・サービス・顧客・チャネル別に分解します。単発制作と保守、SaaS利用料と導入支援、商品売上と送料、広告収益と成果報酬など、性質の異なる収益を混ぜたままでは継続性を判断できません。オーナー個人の費用、一時的な開発費、関連当事者取引、補助金、返金・貸倒なども整理し、調整前後の数値と根拠を残します。
重要なのは、利益を大きく見せることではなく、第三者が同じ前提で再計算できることです。試算表、総勘定元帳、請求・入金、顧客契約、KPI管理表の整合を取り、説明が必要な変動には注記を付けます。
KPIを事業モデルに合わせる
- SaaS:MRR、ARR、1契約当たりの平均売上、解約率、NRR、CAC、LTV、粗利、サポート工数
- EC・D2C:商品別粗利、在庫回転、返品率、リピート率、LTV、ROAS、自然流入比率
- メディア:チャネル別流入、記事群別収益、検索語集中、RPM、CVR、更新工数
- 制作・受託:受注残、案件別粗利、再受注率、保守比率、稼働率、外注比率、検収期間
- 広告運用:契約継続、運用額、手数料率、顧客集中、媒体構成、レポート・提案工数
- アプリ:MAU・DAU、継続率、課金率、利用者1人当たりの売上、獲得単価、クラッシュ率、ストア評価
KPIは定義、集計期間、データ元を明記します。同じ「解約率」でも顧客数ベースと売上ベースでは意味が異なります。管理画面のスクリーンショットだけでなく、エクスポートデータ、会計数値、契約件数と突合できる状態を目指します。
買い手との組合せと非価格条件を考える
企業価値は一つの倍率だけで決まるものではありません。同じ事業でも、買い手の顧客基盤、営業網、開発体制、許認可、データ活用、海外展開との相性で評価や条件は変わります。譲渡対価に加えて、従業員の雇用、ブランド継続、顧客対応、代表者の引継ぎ期間、役員保証、オフィス、運転資金、表明保証、競業避止、アーンアウト等を総合して比較します。
希望条件には優先順位を付けます。「価格が最優先」「従業員の雇用を守る」「サービス名を残す」「半年以内に引継ぎたい」など、すべてを同じ強さで主張すると交渉の軸が見えません。絶対条件、望ましい条件、調整可能な条件に分けると、買い手候補の選定と比較がしやすくなります。
株式譲渡・事業譲渡・資本提携を同じものとして扱わない
株式譲渡は一般に会社の株主が変わる手法で、法人や契約主体は原則として存続します。事業譲渡は対象資産・負債・契約等を特定して承継する手法で、相手方の承諾や名義変更が必要になる項目が増えることがあります。会社分割、合併、第三者割当増資、資本業務提携にも、それぞれ異なる効果と手続があります。
どの手法が適切かは、対象範囲、不要資産・偶発債務、許認可、税務、契約、従業員、個人情報、プラットフォーム、買い手の目的によって変わります。厚生労働省は企業組織再編に伴う労働契約の承継等を案内しており、事業譲渡、会社分割、合併で労働者保護の手続が異なることを示しています。一定規模以上の案件では、公正取引委員会の企業結合に関する法令・ガイドラインも確認対象になり得ます。
Web M&A総合センターは選択肢の整理を支援し、個別の法務、税務、会計、労務、登記、知財等は必要に応じて弁護士、税理士、公認会計士、社会保険労務士、司法書士、弁理士等と連携して確認します。
秘密保持と段階的な情報開示
匿名情報では「特定されないが、検討できる」粒度を目指す
匿名情報は、情報を隠しすぎても買い手が判断できず、詳しすぎても事業が特定されます。地域、顧客業界、売上規模、収益モデル、従業員数、成長率、強みを一定の幅で示し、固有名詞、特徴的な取引先、ドメイン、画面、サービス名は伏せます。公開情報と組み合わせて容易に特定されないかも確認します。
NDA後も開示範囲を管理する
秘密保持契約後は、事業概要書、月次数値、顧客構成、契約サンプル、システム構成等を段階的に共有します。個人データ、ソースコード、脆弱性情報、管理者権限、秘密鍵、APIキー、顧客別単価などは、必要性が高まってから、安全な方法で限定開示します。データルームでは閲覧権限、ダウンロード、透かし、更新履歴、質問履歴を管理し、案件終了時の返還・削除も確認します。
競合候補には追加の配慮をする
競合企業が買い手候補の場合、顧客名、単価、入札情報、広告戦略、検索語、ロードマップ、ソースコード等が競争上の機密になります。買収検討に必要な情報と、通常の営業では得られない機微情報を分け、開示時期、閲覧者、クリーンチームの要否を専門家と検討します。
デューデリジェンスで確認される8つの領域
1.財務・税務
月次推移、売上計上、契約負債、前受金、未収・返金、開発費、ソフトウェア資産、在庫、関連当事者取引、税務申告、簿外債務を確認します。Web事業では決済代行やアプリストアの入金時差、広告費立替、ポイント・クーポン、サブスクリプション前受などが数字の読み方に影響します。
2.法務・契約
顧客・仕入先・外注・代理店・業務提携・賃貸借・借入等の契約を台帳化し、契約期間、解約、譲渡制限、チェンジ・オブ・コントロール、再委託、責任上限、SLA、知財、個人情報、準拠法を確認します。口頭合意や発注書だけの取引は、現状と証拠を整理します。
3.技術・セキュリティ
構成図、クラウド、コード、リリース、監視、バックアップ、障害、脆弱性、権限、端末、ログ、依存サービス、技術負債を確認します。IPAの中小企業の情報セキュリティ対策ガイドライン第4.0版も参照し、資産台帳、バックアップ、クラウド利用、インシデント対応の状態を整理します。認証情報そのものを初期DD資料へ貼り付けないことも大切です。
4.知的財産・OSS
商標、ドメイン、コード、デザイン、記事、画像、動画、データベース、ノウハウの権利者を確認します。従業員・役員・外注が作成した成果物の帰属、第三者素材のライセンス、OSSのライセンス表示やソース開示義務、商標の更新を確認します。登録された商標・特許等の移転には、特許庁の権利の移転等に関する手続で案内される手続が必要になることがあります。
5.個人情報・データガバナンス
どのデータを、誰から、何の目的で取得し、どこに保存し、誰がアクセスし、どの委託先へ渡しているかをデータマップにします。プライバシーポリシー、同意文言、Cookie・広告識別子、委託、共同利用、外国での取り扱い、保持期間、削除、開示請求、漏えい履歴を確認します。
個人情報保護委員会の個人情報保護法ガイドライン(通則編)は、事業承継に伴って取得した個人情報について、承継前の利用目的の達成に必要な範囲との関係を示しています。承継後に自由な目的で利用できるという意味ではありません。事業スキーム、利用目的、告知・同意、契約、安全管理を個別に確認します。
6.人事・外注体制
組織図、役割、雇用条件、重要人材、採用、離職、評価、残業、有給、競業・秘密保持、外部パートナー、属人業務を確認します。代表者や一人のエンジニアだけが本番環境へアクセスできる状態は、早めに複数化し、権限と手順を文書化します。
7.営業・マーケティング・顧客
顧客集中、解約理由、商談パイプライン、代理店、ブランド、広告、検索、SNS、メルマガ、イベント、紹介など、顧客獲得の再現性を確認します。数字が伸びた施策だけでなく、停止した施策、ポリシー違反、アカウント制限、炎上・クレーム履歴も整理します。
8.移管可能性とPMI
資産が存在することと、買い手が使えることは別です。ドメイン、クラウド、コード、決済、解析、広告、ストア、メール、電話番号、SNSを一件ずつ確認し、移管・新規契約・データ移行・併行運用のどれで対応するかを決めます。PMIで誰が顧客対応、開発判断、請求、障害対応を担うかまで確認します。
相談から承継までの流れ
STEP 1 初期相談
相談の背景、対象事業、収益モデル、規模、希望時期、譲れない条件、現在の不安を伺います。会社名やサービス名を伏せた相談から始めることもできます。初回から売却を約束する必要はありません。
STEP 2 選択肢と進め方の整理
株式譲渡、事業譲渡、資本提携、継続保有等を比較し、対象範囲、想定スケジュール、必要な専門家、準備項目を整理します。M&Aが目的に合わない場合は、急いで進めない判断も尊重します。
STEP 3 資料準備と簡易評価
決算・月次数値、KPI、顧客構成、契約、技術、体制、知財、データ、希望条件を整理します。評価はレンジと前提を確認するためのもので、特定の価格や成約を保証するものではありません。
STEP 4 匿名情報の作成
事業が特定されにくい形で、買い手が初期判断できる概要を作成します。開示してよい事項と伏せる事項を譲渡企業様と確認します。
STEP 5 買い手候補の検討
買収目的、事業相性、資金、運営体制、過去のM&A、競合関係、評判、希望条件を確認し、打診先を選びます。数だけを増やすのではなく、承継後の運営像を持てる候補を検討します。
STEP 6 秘密保持契約と詳細開示
NDA締結後に事業概要書や必要資料を段階的に開示します。機密性の高い資料は、検討の進度と必要性に応じて共有します。
STEP 7 経営者面談・意向表明
事業の強み・課題、買い手の方針、従業員、顧客、ブランド、引継ぎ、価格・支払、スケジュールを対話します。意向表明書では価格だけでなく、前提条件、DD、独占交渉、資金、承継方針を確認します。
STEP 8 基本合意とデューデリジェンス
合意した枠組みに沿い、財務・税務・法務・技術・知財・人事・ビジネス等を確認します。質問への回答は推測で埋めず、分からない事項は未確認として調査します。問題が見つかった場合は、改善、価格調整、補償、クロージング条件、取引中止などの選択肢を検討します。
STEP 9 最終契約・クロージング準備
譲渡対象、対価、支払、前提条件、表明保証、補償、誓約、競業、引継ぎ、解除等を専門家と確認します。同時に、権限移行、名義変更、顧客告知、従業員説明、運転資金、鍵・証明書の切替えをリハーサルします。
STEP 10 クロージング・引継ぎ・PMI
契約上の手続と実際の運営移行を実施します。完了後は旧権限の削除、ログ・監視、請求・入金、顧客問い合わせ、障害、KPIを確認し、計画とのずれを修正します。
中小企業庁の中小M&Aガイドライン(第3版)は、支援内容・手数料の説明、利益相反、最終契約のリスク等を整理しています。また、中小PMIガイドラインは、M&A後の経営・意識・業務の統合を考える参考になります。私たちは、成約を終点ではなく、新しい運営体制の出発点と考えます。
クロージング時の「デジタル引継ぎランブック」
Web事業では、最終契約の締結だけでサービスが引き継がれるわけではありません。クロージング日に何をどの順番で実施し、誰が確認するかをランブックにします。
- 買い手側の法人管理アカウントと複数管理者を事前に用意する
- ドメイン登録者、レジストラ、DNS、更新期限、連絡先、移管ロックを確認する
- クラウド組織、プロジェクト、請求、IAM、ログ、バックアップを確認する
- Gitリポジトリ、課題、CI/CD、パッケージ、Webhook、Secretsを棚卸しする
- 決済、EC、広告、解析、タグ、メール、SNS、ストアの権限を追加する
- 証明書、APIキー、SSH鍵、復旧コード、署名鍵を安全な経路で再発行・更新する
- 顧客・従業員・取引先への告知時期と問い合わせ先を切り替える
- 新管理者でログイン、デプロイ、バックアップ復元、請求、返金、サポートを試験する
- 移行完了後に旧管理者、外部代理店、退職者の権限と検証トークンを削除する
- 24時間、72時間、1週間、1か月の確認項目と障害時の判断者を決める
ドメインについてJPRSは、ドメイン名移転と指定事業者変更を案内しています。GitHubはリポジトリ移転で移る項目と条件を示しています。公式手続があっても、連携先、権限、プラン、Secrets、請求、契約まで自動で移るとは限りません。サービスごとの最新規約と画面を確認し、必要なら並行稼働や再構築も計画します。

M&A後の100日を見据えたPMI
PMIは買い手だけの仕事ではありません。売り手が持つ顧客との関係、開発判断、運用の暗黙知、例外対応を、契約前から引継ぎ可能な形にしておくことで、譲渡後の混乱を減らせます。
Day 1までに決めること
対外発表、顧客・従業員への説明、指揮命令、承認権限、緊急連絡、請求・支払、サービス障害、個人情報問い合わせの責任者を決めます。名前やロゴをいつ変えるか、変えないかも、顧客体験に影響します。
30日で安定させること
重要顧客のフォロー、従業員・外注との1on1、未完了案件、障害・脆弱性、権限、資金繰り、KPI定義を確認します。買い手のルールを一度に当てはめるのではなく、止めてはいけない業務と改善する業務を分けます。
100日で前進させること
営業連携、クロスセル、価格、開発ロードマップ、採用、コスト、ブランド、ガバナンスを見直します。シナジーは契約書に書くだけでは生まれません。責任者、期限、測定指標、必要投資を定め、想定との差を定期的に確認します。
譲渡企業様の手数料0円について
Web M&A総合センターは、譲渡企業様の手数料0円を掲げています。相談にあたっては、対象となる支援範囲、契約形態、買い手側の条件、専門家費用や実費の有無、例外があるかを事前に確認し、書面で理解できる形にすることが大切です。
M&A支援では、誰から報酬を受けるか、仲介かFAか、どのプロセスを支援するかによって、役割や利益相反の確認点が変わります。候補先の選定理由、情報の扱い、相手方から受ける報酬、直接交渉の制限、専任、テール条項、契約解除等について、不明点を残さないよう説明します。中小企業庁のガイドラインも、支援内容と手数料、相手方手数料、利益相反等の説明を重視しています。
相談前に準備できるチェックリスト
すべて揃っていなくても相談できます。現在地を把握するため、分かる範囲で確認してください。
目的・条件
- 譲渡を考えた理由と、希望時期を言葉にした
- 価格、雇用、ブランド、顧客、引継ぎ期間の優先順位を付けた
- 株主、役員、家族、共同創業者との関係を確認した
- M&A以外の選択肢も比較した
財務・KPI
- 3期分の決算書と直近月までの試算表がある
- 月次売上・粗利をサービス、顧客、チャネル別に分けられる
- KPIの定義、データ元、集計期間を説明できる
- 一時費用、オーナー関連費用、未収、返金、前受を把握している
顧客・契約・人
- 顧客・仕入先・外注・提携契約の台帳がある
- 譲渡制限、解約、更新、責任、知財、個人情報条項を確認した
- 重要顧客・重要人材への依存度を把握した
- 従業員と外部パートナーの役割・条件・引継ぎ可能性を整理した
技術・アカウント
- ドメイン、DNS、クラウド、メール、証明書の管理者を把握した
- コード、リポジトリ、仕様、CI/CD、監視、バックアップを一覧化した
- 広告、解析、決済、モール、ストア、SNSの権限一覧がある
- 代表者個人アカウントや共有パスワードへの依存を把握した
- 重大障害、脆弱性、漏えい、アカウント停止の履歴を整理した
知財・データ
- 商標、ロゴ、コード、記事、画像、動画の権利者を確認した
- 外注成果物、素材、フォント、OSSの利用条件を確認した
- 個人情報の取得目的、保存先、委託先、保持・削除を説明できる
- AI事業では学習・評価データの由来と利用条件を整理した
よくある質問
Q1.まだ売却すると決めていません。相談できますか?
はい。売却を決める前の相談に対応しています。目的、時期、選択肢、準備事項を整理し、現時点で実行しない判断も含めて検討します。相談したことだけを理由に、買い手への打診や情報公開を行うことはありません。
Q2.会社名やサービス名を出さずに相談できますか?
はい。初期段階では固有名詞を伏せ、業種、収益モデル、概算規模などを抽象化して整理できます。候補先への開示は、対象、内容、時期を確認しながら進めます。
Q3.赤字や小規模な事業でも対象になりますか?
規模や黒字・赤字だけで一律に判断しません。技術、顧客、契約、データ、ブランド、人材、買い手との相性などに価値がある場合があります。一方、すべての案件に買い手が見つかるとは限らないため、現状と課題を率直に整理します。
Q4.譲渡価格はいくらになりますか?
収益性、成長性、継続性、顧客集中、技術負債、契約・権利、運営依存、取引手法、買い手との組合せ、条件によって変わります。初期段階では前提を置いたレンジを検討できますが、特定価格や成約を保証するものではありません。
Q5.相談から成約まで、どのくらいかかりますか?
準備状況、対象範囲、候補先、DD、許認可・契約同意、プラットフォーム移管等で異なります。短さだけを優先すると、確認不足や引継ぎ不良につながることがあります。希望時期から逆算し、無理のない計画を作ります。
Q6.従業員や取引先に知られず進められますか?
情報を知る人を限定し、匿名情報、NDA、段階開示で漏えいリスクを抑えます。ただし、DD、契約同意、労働契約、クロージング準備等で説明が必要になる時点があります。いつ誰にどう伝えるかを計画し、法令・契約・従業員保護を踏まえて専門家と確認します。
Q7.顧客データはそのまま買い手へ渡せますか?
事業承継であっても、個人情報を無条件で自由に利用できるわけではありません。取引手法、承継前の利用目的、プライバシーポリシー、契約、告知・同意、安全管理、越境等を個別に確認します。必要に応じ個人情報保護の専門家へ相談します。
Q8.ドメインやクラウド、広告アカウントは譲渡契約に書けば移りますか?
契約に対象を明記することは重要ですが、サービスごとに移管規約、権限、本人確認、審査、請求、相手方同意があります。移管できない機能や履歴がある場合もあるため、公式手続を確認し、新規契約やデータ移行を含む代替策を用意します。
Q9.ソースコードが代表者個人のGitHubにあります。問題ですか?
直ちに譲渡できないと決まるわけではありませんが、権利、共同開発者、ライセンス、リポジトリ権限、Secrets、CI/CD、パッケージ等を整理する必要があります。法人管理の組織へ移す、複数管理者を置く、鍵を更新するなど、引継ぎ可能な状態を計画します。
Q10.外注が作ったデザインや記事も一緒に譲れますか?
外注契約、著作権の帰属、利用許諾、二次利用、改変、氏名表示、第三者素材の条件によります。支払済みであることだけで権利移転を断定せず、契約と制作経緯を確認します。未整理の場合は、追加契約や利用許諾等を専門家と検討します。
Q11.買い手はどのように選びますか?
事業相性だけでなく、買収目的、資金、運営体制、情報管理、過去のM&A、従業員・顧客への方針、希望条件を確認します。最高価格の提示者が常に最適とは限らないため、価格と非価格条件を比較します。
Q12.競合会社を買い手候補にできますか?
可能性はありますが、顧客名、単価、広告戦略、コード等の競争上重要な情報には追加の配慮が必要です。匿名情報の粒度、開示者、開示時期、クリーンチームの要否などを案件ごとに検討します。
Q13.代表者は譲渡後すぐ退任できますか?
事業の属人性、顧客関係、技術、買い手の体制、契約条件によります。段階的な引継ぎ、一定期間の関与、顧問契約等を検討することがあります。希望と必要性を早めにすり合わせます。
Q14.譲渡企業の手数料は本当に0円ですか?
Web M&A総合センターは譲渡企業様の手数料0円を掲げています。対象となる支援、契約形態、専門家費用・実費、例外の有無など、案件ごとの条件は契約前に書面で確認してください。ご不明点には説明します。
Q15.相談したら必ず売らなければなりませんか?
いいえ。途中で条件が合わない、準備を優先したい、経営を継続したいと判断することもあります。契約上の義務や費用、専任・直接交渉制限等は事前に確認したうえで、納得して進めることが大切です。
Q16.法務・税務の相談にも対応できますか?
論点の整理と必要な専門家との連携を行いますが、このページや一般的な案内は個別の法的・税務的助言ではありません。案件に応じて弁護士、税理士、公認会計士、社会保険労務士、司法書士、弁理士等へ確認します。
Q17.地方の会社でも相談できますか?
はい。オンラインでの初期相談や資料共有を活用し、地域を問わず検討できます。現地確認、経営者面談、重要な説明等が必要な場合は、案件に応じて進め方を調整します。
Q18.買い手として登録できますか?
はい。対象領域、投資規模、地域、希望手法、運営体制、資金計画等を登録いただけます。登録は特定案件の紹介や成約を保証するものではなく、案件ごとの秘密保持、適合性、条件確認を経て検討を進めます。
Web事業の承継は、早い段階の「整理」から始まります
Web事業は、形のない資産が多いからこそ、整えれば価値と承継可能性を説明しやすくなります。逆に、売却を決めてから短期間で契約、権利、データ、アカウント、運用手順を集めようとすると、選べる買い手や条件が狭まることがあります。
今すぐ売る必要はありません。まずは、事業の現在地、経営者が実現したいこと、守りたい顧客・従業員・サービス、準備に使える時間を整理するところから始めてください。
- 譲渡を検討している方:譲渡相談をする
- Web・IT事業の買収を検討している方:買い手登録をする
- その他のご質問:お問い合わせ
- 運営主体を確認する:株式会社M&A Doの運営会社情報
ご利用前にご確認ください
本ページは、Web M&A総合センターの支援方針と、Web・IT事業のM&Aで一般に検討される事項を紹介するものです。特定の案件について、譲渡価格、買い手の発見、成約、期間、税務効果、法的効果、許認可・契約・アカウントの承継、情報セキュリティ等を保証するものではありません。
実際の取引条件、手数料、支援範囲は、個別の相談・契約でご確認ください。法務、税務、会計、労務、登記、知的財産、個人情報、競争法、業法、海外法、プラットフォーム規約等は案件ごとに異なるため、必要に応じて各分野の専門家および公式窓口へ確認してください。掲載した外部資料は一般情報の参照先であり、その掲載主体がWeb M&A総合センターまたは株式会社M&A Doを推奨・保証するものではありません。外部制度・規約・資料は変更されることがあるため、検討時点の最新版をご確認ください。
